川との関係に着目して日本の都市をあらためて眺めてみると、川の下流域の三角州に作られた都市が数多くあることに気づく。淀川下流の大阪市、那珂川下流の福岡市、太田川下流の広島市、紀ノ川下流の和歌山市などなど。三角州は川から流れてきた土砂が堆積してつくったなだらかな平野のことを言うので、たくさんの人口を抱えやすいのだろう。
伊勢市を歩いてみて、伊勢市もまた宮川や五十鈴川がつくった三角州だと気づいた。衛星写真で見てもなかなか美しいデルタを形成している。
しかしここで一つ疑問がわく。伊勢市の観光地といえば伊勢神宮と夫婦岩。夫婦岩は文字通り岩場だが、なんで三角州の砂地の土地に岩場があるんだ? そこであらためてMAPを見てみると、夫婦岩はここだった。
夫婦岩は、三角州の端っこ、右肩上がりに東西に一直線に走る山肌ラインが海に覗いた場所にあった。岬のようなところだ。これはもしかして・・・中央構造線だ。 産総研の地質図で確認してみる。




冒頭の問い「三角州である伊勢に大岩(夫婦岩)があるのか」に対する答えは、伊勢は確かに三角州の上のまちだが、夫婦岩はこの三角州には立地せず、境界の山岳岩場地帯にあった。
夫婦岩は神社の一部を形成していて、この神社は二見興玉(ふたみおきたま)神社という。そして周辺の浜辺を二見潟(ふたみがた)と呼び、町名は二見町(ふたみちょう)だ。そしてこの二見町は、現在は伊勢市の一部だが2005年より前は度会郡二見町という独立した地方自治体だった。
地質の差異もそうだが、ここはなんか伊勢っぽくないんだよな、という以前感じた肌感覚は正しかった。

ジオロジー的に面白いところには、たいてい神社があって文化と歴史があるもんだ。ここもまたその一つ。