橋杭岩を選んだ理由
和歌山県串本市の橋杭岩の道の駅に陣取って、日の出を待った。これは「東の空に昇る日の出が美しいスポットを探す」ことがテーマの今回の旅のメインイベントの一つである。
水辺から昇る日の出は朝陽が水面に反射するのが美しい。しかしそもそも東に水辺が開けている地形は関西では非常に少ない。関西では海はだいたい西か北なのだ。東に水辺が開けている数少ない地点でも、水辺が人口構造物などで小汚くなっていては不適だ(漁港ってあんまり)。地平線が見える海は良いのだがそれだけではやや単調で、島や半島や雲や船などの陰影がアクセントになって良い景観になっていることも多い。そもそも雲が多すぎては日の出が見えないし、日の出の方角は季節によって違う。
日の出撮影は総合科学である
日の出がおもしろいのは、このように考慮すべき変数が多いからだ。緯度経度と日付による日の出の時刻・・・天文学。その場所の天気、とくに雲・・・気象学。その場所の地形・・・地形学や地質学。その場所の自然景観・人工的構造物・・・自然・人文地理学など。日の出撮影は知恵と行動力が求められる総合学問だ。
その観点でGoogle Mapと睨めっこしながら、今回選んだのが橋杭岩だった。なお撮影機材にはさほどこだわりがなく、普通のスマホである。
おもしろいシルエットを提供してくれている橋杭岩は、「1500万年前の火成活動により、泥岩層の間に流紋岩(※筆者注:火成岩の一種)が貫入したものである。貫入後に差別侵食により、柔らかい泥岩部が速く侵食され、硬い石英斑岩が杭状に残されたもの」だそうだ。このような岩が横一列に約850m続く。
橋杭岩はなぜ横一列になるのだろう?
どうして横一列になるのだろう? 調べてみるとこの火成岩群はどうやら横一列どころか、巨大な円周を描いており(熊野カルデラと呼ばれる)橋杭岩はその一部らしいのだ。古座川の一枚岩、那智のゴトビキ岩や那智の滝などがその円周に連なる。これらの熊野地方に多い巨岩・奇岩は1400万年前の巨大噴火で出現した可能性が高いのだそうだ。おもしろい。→参照
今回の成果はどうだった?
想定外だったのは、日の出時刻の7時過ぎになっても太陽が昇らないこと。この季節の太陽は真東よりもやや南側から昇り、橋杭岩からだと紀伊大島に邪魔されてしまった。15分から20分遅れで太陽は昇ったが、すでに空がだいぶ白んでいた。
橋杭岩のうちの2つが向かい合った男女のような形だったのは幸運な方に転んだ想定外で、見つめ合う男女の物語を想起させる写真になった。
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