こういう施設がもっと欲しい 国立公園の環境省ビジターセンター

ネイチャー派に嬉しいビジターセンターという情報施設

ジオパーク登録されているエリアを訪れるのは楽しい。どこも地形地質のおもしろさがあるし、ジオサイトという説明スポットもある。ただし弱点はジオロジーの説明に限定されること。やはりその地形地質インフラの上での成立している動植物のエコロジーや、その土壌インフラを活用した人の営みの蓄積なども知りたい。そんな思いを抱えて南紀方面をうろついていたところ、那智勝浦に「宇久井ビジターセンター」なる環境省の施設があることを知って訪れた。これが予想をはるかに上回る最強の施設だった。

ただの施設としてもなかなか良い。地域の動植物の説明や展示があり、案内員がみどころの植生などを教えてくれた。これだけで旅が何倍も充実する。程よくお金もかけられている。

加えてこの施設は宇久井半島の付け根にあって周囲は森林。主役はこの後背地の半島部分の自然生態系で施設はその脇役だった。ところどころの草木にネームプレートがつけてあり野生の生態の観察が楽しい。道路は車止めされていて、観光客・訪問客も少なく、野鳥のサンクチュアリーだった。

宇久井は野鳥の楽園だった

始終そこら中で野鳥の鳴き声が聞こえた。鷹の種類の何かが広い空をゆうゆうと飛んでいた。森ではメジロが飛び回っていた。しきりに木をつついているキツツキ音がする方に目をやると、黒に白の横縞の入ったまるでアニマル柄の背中の鳥が数羽。これはコゲラと知った。

植物で目に付いたのは赤い実がなっているこの大きな植物。アオノクマタケランというショウガ科花ミョウガ属の多年草らしい。グーグルレンズってほんとに便利だ。

多種多様な岩石がゴロゴロ

そしてちょっと降りていくと海岸だ。火成岩っぽい岩があったり巨大な礫岩があったりする。砂礫の浜には生痕化石っぽい岩もあった。少々サンゴ石も転がっていたのは、串本方面から流れついたのだろうか。

宇久井半島は陸繋島である

宇久井という土地はもともとは島だったのが、長い年月の間に砂州でつながったのだとか。こういうのを陸繋島(りくけいとう)と呼ぶことをここで学んだ。過去写真と比べてみると現在の市街地の一部は砂州を拡張造成したものであることがわかる。住宅が立ち並んでいるが左側半分、曲線がいびつだ。

しかしなぜ宇久井という無名地に?

このような優れた施設が宇久井というさして有名でない場所にある理由はなんだろう? まずこの地は吉野熊野国立公園の一部で、この施設は自然公園法に基づく案内・解説・体験促進・研究施設であることがわかった。とはいえ、広い南紀の中でなぜ串本や紀伊大島や那智勝浦にではなくここにあるのかも気になる。これについては案内員の方に尋ねてみたところ、かつてここはリゾート開発されかけた土地で、頓挫した後不法投棄地になっていたのを地元の方がいろいろ努力されて環境省が土地を購入する形になった、と教えていただいた。ここは人口構造物が少なく自然環境は抜群だし、立地も南紀の中央にあって回遊性の観点からは良い。

二時間ほどたっぷりと歩いて堪能した。非常にお勧めできる、違う季節ににまた訪れたい施設・場所である。

投稿者について

自然を愛するジオグラファー、ジオトラベラー。A naturelover, a geotraveller and a bicycle lover.

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