奈良東部の山の中、もうちょっとで三重というところに曽爾村(そにむら)という読みにくい村がある。曽爾村は「日本で最も美しい村連合」に加盟している。この団体に加盟しているのは近畿圏では、京都の伊根と和束、奈良の吉野、兵庫の香美町小代など(※本日現在)。
曽爾村の売りはススキ。夏は山が黄緑色に染まり、秋は黄金色に輝く。そのような一面ススキの景観を見に結構な数の観光客が訪れる。私が訪問したお盆前の週末も、モーレツな暑さにも関わらず駐車場が満車で列になって並ぶほどだった。
さて日本の山は放っておけば大木天国になるのであり、ススキ野は人工的に手を入れた産物である。すなわち、山焼きを毎年早春に行っているのだ。文字通り山に火を放って焼いているのだ。奈良では宗教行事のようになっている若草山の山焼きが有名だが、ここ曽爾の山も焼かれるのだ。
人為的な自然攪乱だが、2000年にもわたって毎年行っている攪乱により維持されてきている生物多様性も貴重であるとは思う。野ウサギや野ネズミにとっては天敵から身を守りやすい環境らしい。田んぼがそうであるように、日本の里山景観として肯定的に捉えてよいと思う。なお曽爾高原にはお亀池という池があり、ビオトープになっている。蛇にとっても住みよい環境のようで、大蛇伝説もある。
問題は、大規模な野焼きはPM2.5の大量発生源となることだ。年に数日だしいいんじゃね?と思う自分と、それらによるアレルギーに苦しめられている自分との間の葛藤がある。自分が苦しめばいいだけなんじゃね? いやいや苦しむ人は自分だけじゃないしそこまでして山を焼く意味が現代においてどれだけあるの?